行政書士と営業・失敗から学ぶ「行政書士は食えない資格?」
よく、行政書士、資格取っても食っていくのは大変という話がありますよね。私も、最初はそう思いましたし、実際に最初はそうでした。案件を獲得したいと思って、いろいろなことをやりました。例えば、企業に電話をかけて訪問のアポイントをとってみる。業界を決めて、会社の電話番号のリストをあつめて、一件一件電話しました。「社長さんいらっしゃいますか」「法務のご担当の方はいらっしゃいますでしょうか」「行政書士の小野と申します。法務サービスを提供しているのですが、よろしければ貴社を訪問してご説明させていただけないでしょうか。」こんな感じです。全然ダメでした。100件電話して、アポイントが1件とれるかどうか。そのアポイントも、当日会社に伺ったら忘れられていたり。情けなかったですね。自分のサービスをパンフレットにして、企業にDMを出したりもしました。これもまったく反応無しでした。いま思えば手作り感満載のパンフレットで、恥ずかしかったですね。そんな活動をするのにも、印刷代、電話代、交通費など、経費もかかるのに、全然収入もなく、事務所は赤字続き。とても辛い毎日でした。
その頃、そうやって辛い試行錯誤をしながら、考えたことがあります。やっぱりですね、お客さんになってほしいから何かをしているということは相手には絶対分かってしまうんですね。そうなると、やっぱり利害関係っていうのがいつまでも抜けなくて、信頼されないし、相手も忙しいですから、自分の話を聞くために時間を割いてくれません。そのような無理をするよりも、普段の生活の中で仕事を見つけられないかなと思うようになっていきました。行政書士の仕事の範囲は非常に広いですから、何でも仕事になる可能性があるんじゃないかと。
そんなとき、よく通っていた好きなレストランでお店の人と話をしているうちに、今度業態をちょっと変えたいと思うんだけれどみたいな話になったんですね。私が行政書士だということは普段の雑談の中で出ていましたから、こういう風にしてこういう手続きをして許可取らないと警察の指導来ちゃいますよって言ったら、あぁそれは大変だ、ぜひお願いしたいと、依頼をいただいたことがありました。このときですね。ああ、依頼というのはこうやって得られるものなんだと思いました。他にもですね、友達とお店で飲んでいて、夜12時を過ぎたときに、あれ、12時過ぎてこの店営業していいのかなとか、あるいはこのレストラン向こうにダーツあるなぁ、あれ、ダーツバーってレストランでやってよかったっけというようなことを、ぼんやり考えていました。それで、店員が店を閉めようとそわそわしているのを見て、ああ、そろそろ帰ったほうがいいですよね、なんて話してたら、お店の人と会話の糸口ができました。依頼者になりうるつながりというのはそういうところから生まれてくることが分かってきました。それはいわゆる一生懸命電話をかけたり、DMを送ったり、訪問して営業するようなスタイルとは違うけれど、そういうことを普通の生活の中でいつも考えながら人と接していくと、依頼の種は出てくるんだなと、理解できるようになりました。
その頃から、「依頼は仲間から生まれる」という発想で、自分がお付き合いしてきた全てのつながりを、もう一度あらためて、大切に意識するようになりました。そうしているうちに、最初に就職した職場や大学時代にアルバイトをしていた家庭教師センターなども、依頼者になってくれました。将来に渡って良いお付き合いをしたいのであれば、その時限りで終わらないようにすること、仕事が欲しいから付き合うのではなくて、仲間として付き合う、一緒に何かをやって楽しかった、あるいは一緒に何かを達成して充実感を一緒に味わった、自分が先に経験したことは教えてあげる、向こうから教えてもらう、こういった関係を継続して続けていくことは必ず後々いつか誰かが思い出してくれて、「あいつ」に相談しようということにつながります。「あいつ」に相談しようと思ってもらうためには、やっぱり「先生」じゃ駄目です。依頼者から「先生」と言われているうちは信頼されてないんじゃないかなと私は思っていて、今でもお付き合いさせていただいている昔からの社長さんは私のことは先生とは言わないです。弁護士になりましたが、今でも「小野ちゃん」です。ちゃん付けで呼ばれるぐらいでちょうど良いです。それぐらいであれば本音で話をしてくれるし、困ったときに気軽に連絡をくれます。そういったつながりから仕事は継続的に増えていきました。